考察:韓国の「DHC叩き」にみる「偏向報道からの脱却」

 偏向報道への“言論封殺”は是であるか非であるか

 まず状況から追っていきたい。

 この問題の発端となったのは、韓国の放送局・JTBCのニュース番組が8月10日、「化粧品会社DHCが韓国で商売をしながら日本では韓国叩きの放送を行っている」との内容を報じたこと。その後、複数の韓国メディアが同調した報道を行い、韓国ではDHC商品の不買運動に発展している。

 韓国叩きの放送を行っているとされるのは、DHCの子会社「DHCテレビ」が制作するネット番組『真相深入り! 虎ノ門ニュース』を指す。「日本不買運動」や「平和の少女像」を卑下する発言をはじめ「日本がハングルを作って韓国に広めた」など偏った情報を広めているとされている。

 DHC不買運動の中心となったのは、韓国・誠信女子大学の徐敬徳教授(日本海表記問題や旭日旗問題を中心的に取り上げている人物)で、11日にはフェイスブックなどでハッシュタグキャンペーン「#さよならDHC」を開始している。

 また同件をめぐっては、13日に韓国の女優チョン・ユミが、DHCの広告契約の破棄を発表するなどもあった。

 そして13日、現地法人である DHC KOREAは同社HPに謝罪文を掲載するに至る。
 謝罪文が韓国語であるため
●スポーツソウル日本語版 2019.8.14 配信記事
 を下に引用する。

(前略)

DHC KOREAは代表取締役を含め全職員が韓国人であり、我々も皆様が思ったのと同じ気持ちで放送を確認しました。

(中略)
過去の発言を含めた「DHCテレビ」出演者のすべての発言について、DHC KOREAは同意しません。

(中略)
改めまして今回の問題に対し、国民、顧客、関係会社のみなさんに心よりお詫び申し上げます。(以降略)

https://sportsseoulweb.jp/society_topic/id=5715

  

 これで騒動が治まったかというとそうではない。
 翌14日になって DHC テレビが自社HPで、韓国メディアの批判や不買運動に対して真っ向から対立する「お知らせ」を発表している。

(前略)

番組内のニュース解説の日韓関係に関する言説は、事実にもとづいたものや正当な批評であり、すべて自由な言論の範囲内と考えております。韓国のメディア各社におかれましては、弊社番組内容のどこがどう「嫌韓的」か、どこがどう「歴史を歪曲」しているのかを、印象論ではなく、事実を示し具体的に指摘いただけましたら幸いです。
(中略)
言うまでも有りませんが、韓国DHCが提供する商品やサービス、現地スタッフと、DHCテレビの番組内容とは直接何ら関係はありません。そうした常識を超えて、不買運動が展開されることは、「言論封殺」ではないかという恐れを禁じ得ません。 (以降略)

https://dhctv.jp/information/2019-08-14-328672/

  

 さらには問題とされている 『真相深入り! 虎ノ門ニュース』 の14日放送分で、DHC KOREAが13日に謝罪文を出したことにふれて「全員殺すなどの脅迫があった」ことや「(同社社員が)韓国警察に保護を受けて帰宅した」ことなどを明かし、「謝罪しなければ(人命が)危険な状況に置かれていた」と説明。番組中では、今後も論調に変更はないことを改めて示している。

 これを受けて韓国メディアは 再び加熱する。

●東亜日報 2019.8.15 7:32 配信

「DHC、韓国の不買運動を非難…嫌韓放送を継続」

http://www.donga.com/jp/article/all/20190815/1818486/1/DHC

 

 このように同騒動はドロ沼の展開をみているのだが、ここではこの問題については時系列を書き記すに留める。 これは歴史認識の相違や日韓互いに持つ感情論が複雑に絡み合った1つの結果であり、起きるべくして起きた問題であるのだが、当面は この問題の行き着く先がどのようなものになるか注視を続けるとしたい。

 

 「偏向報道・記録室」では、もう一歩考えを進めたい。

 

 少し韓国の動きに目を向けて状況を整理する。 

 番組内容の正当性(公平性)について論じないことが前提ではあるが、多くの韓国の人々が、 DHCテレビの同番組を「国民感情に障る偏向報道」として受け取ったことは事実である。結果、DHCテレビの親会社である化粧品会社DHCの商品の不買運動へと発展した。

 また、この問題に先立って韓国では、文政権高官によって韓国メディアへの「言論統制」とも受け取れる発言がされていた。

●産経新聞 2019.7.17 18:02 配信
文政権が韓国紙日本語版を「売国的」と批判 事実上言論統制

https://www.sankei.com/world/news/190717/wor1907170023-n1.html

 文政権の高官らが、朝鮮日報や中央日報などの韓国新聞の日本語版記事について、韓国国民に益をもたらさない売国的記事(=反体制)として非難した。この高官のうち1人は8月の内閣改造で法務部長官として入閣を果たしている。

 

 政権が言論弾圧に動けば市民も動く。
 朝鮮日報の不買運動である。

 新聞そのものを不買するだけでなく、朝鮮日報に広告を出した企業の製品をも不買するという徹底したものである。
 さらには、朝鮮日報の廃刊およびTV朝鮮の設立許可の取り消しを求める「国民請願」が出され、この記事を書いている8月17日14:20現在、24万5569人が賛同票を投じている。
 以下にその状況を報じた韓国紙の記事を引用する。

●ハンギョレ新聞 2019.7.23 17:12 配信
「朝鮮日報」不買に飛び火した日本製品不買運動

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190723-00033959-hankyoreh-kr

 

 つまり「国民の意にそぐわない記事を書くメディアは潰す」という運動を起こすことは、韓国では当たり前の行動であり、すなわち「正義」なのだ。

 誰も他人が信じる「正義」を非難することは出来まい。

 

日本は、どうだ。

 

 本題である。
 ここでは少し筆者の思いを語ることをお許し願いたい。

 

 周知の事実として、日本でも偏向報道を日常的に行っているメディアがある。
「多くの日本人にとって受け入れがたい偏った報道をするメディアがある」と言い換えても良いだろう。
 こうした現状に、日本は、日本人は、どのように対処をしているだろうか。

 

 昨今、日本にも「正しくない報道を修正しなさい」と指摘する閣僚が現れ、偏向の過ぎる媒体に対して「捏造だ」「不買をしよう」と声を挙げる人々が増えてきている。非常に頼もしいことである。しかし、それがヒートアップして一線を越えれば韓国と全く同じ形になる。それも「正義」の一つであることは前段で触れた通りであるが、もちろん日本の現状を評するに、それらの言動はまだ冷静さを失ってはいないといえよう。

 

 実際のところ、徒党を組んで「捏造だ!」「不買だ!」とやるのは簡単だ。肩を組む隣人と共に「あれは気に入らないよな」「そうだよな」と確認しながら集団として声を大きくしていく過程では、連帯意識から生まれる安心感も得られるだろう。 そう、これはいじめの形と同じで、蔓延しやすい少数排除の図式でもあるからだ。

 

 しかし多くの日本人はそれを良しとはしていない。

 

 報道の自由、言論の自由、表現、思想、信教の自由。そして知る権利。
 これら全てをまったく侵害しない形で「偏向報道」への対処を試みているのが、現在の日本の、大部分の日本人の姿だと筆者は考える。
 全ての権利を認めつつ真っ向から情報操作に立ち向かおうという、誠に美しく、正しき道である。

 

 筆者には1つの確信がある。

 

 日本人には個々に嘘を嘘と見抜く知性が備わっており、広い視野で適切な判断を下す能力を有しているということだ。徒党を組んで当たるまでもなく、平らな目線で事実だけを並べてゆけば、各々の判断を間違うことはないのだ。仮に誤った選択をしたとしても、再び正しい選択をしなおすことが許される環境が日本にはある。日本と日本人は、それが出来るのである。

 

 偏向報道を繰り返すメディアは、情報伝達機関として用を成さないのであるから、いずれは端から存在しないに等しいものとなる。そして誰からも必要とされない媒体は、自然に淘汰されていくだろう。

 

 それが最も良いのだ。

 それこそが、正しい選択であると信ずるものである。