在日米軍駐留費「5倍要求」のデマ

2019-08-12

フェイクと呼ぶにはお粗末すぎる捏造報道の顛末

   

 コトの発端は7月31日に報じられた1本の記事だった。

●朝日新聞  2019.7.31 14:00 配信
米軍駐留費「日本は5倍負担を」 ボルトン氏が来日時に

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190731-00000030-asahi-pol

  

 トランプ米政権が在日米軍の駐留費について、日本側に現在の5倍の負担を求めたという驚きのニュースだ。
 この記事によると7月21日、22日と来日していたボルトン米大統領補佐官が、安倍首相をはじめとする政府要人と会談した際に5倍負担について言及したのだという。

 その数日前から国際ニュースを賑わせていた話題がある。
 『米政府が韓国政府に対して、在韓米軍駐留費を現状の5倍負担するように求める意向だ』というものだ。この報道の当事者である「米韓」の部分が、突如として「日米」に入れ替わった形だった。

  

  ●中央日報日本語版  2019.07.30 06:57 配信
「ボルトン氏の訪韓目的は防衛費、5倍をはるかに超える50億ドル要求」

https://japanese.joins.com/article/032/256032.html

 上記は韓国メディアの報道である。ボルトン米大統領補佐官が訪韓した際に、韓国政府に巨額の負担を要求するのではないかと報じた記事だ。

 
 そうした中で、朝日新聞は「日本に5倍を要求」と報じたのである。

「韓国が5倍なら日本も5倍だというまったく安直な発想から朝日新聞が流したデマではないか」というのは一報の当初から各所で指摘されていた。中には「朝日新聞の記者(デスク)は小学生レベルの算数もできない」とせせら笑う反応すらあったほどだ。

 これらの声は、普段から偏向報道を繰り返す媒体だから、という趣旨で発せられたものではない。
 歴とした理由があるのだ。

  

  

 上記は防衛省HPに掲載されている図表だ。(画像をクリックで引用元が開きます)。
 在日米軍駐留経費負担。
 いわゆる「思いやり予算」の総額と内訳である。

 朝日新聞は「日本が5倍の負担」と報じているが、この総額の5倍となれば、それは米軍駐留費の「全額」の何倍にもあたる金額となる。これは04年に米国防総省が発表した米軍駐留各国の経費負担割合で「日本は74.5%」とされた数字を拾い上げてみると分かり易い。

 米国防総省74.5%を用いて計算すると 
 74.5% × 5 = 372.5%
 となるのである。

 米国軍を日本の「傭兵」として雇い、領空領海侵犯に際しては米軍がスクランブルで出撃するというなら話は別であるが、日本には自衛隊が海上保安庁という防衛組織があるのだから、その議論は現実味が無い。つまり、朝日新聞は何をもって「5倍」と錯誤することができたのか、その真意を汲み取ろうとすることのほうが困難なほど、突拍子も無い話といえるだろう。


 かくして、一報からほどなく誤報が公になる。

●時事通信 2019.07.31 19:21 配信

「思いやり予算5倍」報道否定=菅官房長官

https://www.jiji.com/jc/article?k=2019073101177&g=pol

  

 菅官房長官は31日の記者会見で朝日新聞の報じた「ボルトン米大統領補佐官が5倍の要求をした」との報道について、「そのような事実はない」と否定した。

 しかし、当の朝日新聞は記事を訂正、撤回することはなく(一部表現を修正した部分はある)、その翌日の日付でもほぼ同じ見出しで報じている。

  

●朝日新聞 2019.8.1 5:00 配信
米軍駐留費負担「大幅増を」 日本に「5倍」要求も

https://www.asahi.com/articles/DA3S14122366.html

   

 もはや誤報か確報か、意図的な捏造であったか否か、などと議論するには値しないだろう。